ごはんやパンには炭水化物が(糖質)が含まれており、食べると胃や腸で消化されブドウ糖になり、吸収されて、一部は肝臓に蓄えられます。残りのブ ドウ糖は肝臓から心臓に行き、血管を通って全身に運ばれます。
血液の中のブドウ糖のことを血糖といい、食事前には70~110、平均90mg/dlあり、食後に上昇します。血糖は体のすみずみで筋肉細胞など にとりこまれエネルギーとして利用されます。その結果、食後2時間もすると血糖は元のレベルに戻ります。
ブドウ糖が細胞に入るには、インスリンと呼ばれる鍵が必要です。インスリンは胃の裏側にあるすい臓のランゲルハンス氏島から、血糖の高さに応じて 分泌されています。食事をしない時に分泌されている分を基礎分泌、食後に血糖の上昇に合わせて分泌されている分をインスリンの追加分泌といいます。 インスリンと同時に分泌されるC-ペプチドもインスリンの分泌能力を推測するのに役立ちます。
インスリンは細胞の鍵穴(インスリン受容体)に作用して、ブドウ糖を入れるドア(糖輸送体)を開き、その結果、細胞外からブドウ糖が取り込まれブドウ糖が肝臓などに蓄えられます。血糖を上げるホルモンはたくさんありますが、血糖を下げるホルモンはインスリンだけです。インスリンは 蛋白質や脂肪の利用にも必要です。
糖尿病とはブドウ糖が細胞に取り込まれないため、血糖が持続的に上昇した状態で、細胞の中は栄養失調状態です。原因はすい臓からの鍵不足(インス リン分泌不全)か、細胞の鍵穴の目詰り(インスリン抵抗性)で、その結果、インスリン作用が低下して高血糖になります。インスリン作用が正常者の 約1/4に低下すると血糖が上昇しはじめ、約1/10に低下すると糖尿病になると考えられます。インスリン分泌不全の原因の大部分は体質(遺伝)でインスリン抵抗性の原因の多くは生活習慣病(肥満、運動不足、ストレスなど)です。もうひとつ 大切な要素として、軽度の高血糖そのもの(ブドウ糖毒性)がインスリン分泌とインスリン抵抗性を悪化させ、悪循環を形成することが明らかになり、 進行要因として重要視されています。
食前血糖が約170mg/dlより上昇すると、尿に糖(尿糖)があふれてきますが症状はほとんどありません。食前血糖が約250mg/dl以上に 上昇してはじめて尿糖が大量にでるようになり、夜間尿、口渇が始まり、筋肉が溶け出して体重減少も始まります。自覚症状をあてにしたら生活習慣病 の治療は失敗です。
ヘモグロビン(血色素)にブドウ糖が結合(糖化)したものです。
糖化は高血糖の程度と持続時間に応じて起こります。
過去1~2ヶ月間の平均血糖値の指標で、糖の貯まりをみる検査と呼んでいます。
正常者の基準値は4.8~6.2%(NGSP値)でHbA1C×20=日頃の食前血糖値、と換算できます。
アルブミン(蛋白質)にブドウ糖が統合(糖化)したものです。
過去1~2週間の平均血糖値の指標で、正常者の基準値は11~16%です。
糖尿病の診断基準は合併症の起こりやすさから設定されました。
食後高血糖で、大血管症(狭心症・心筋梗塞・脳梗塞・足の壊疽)が起こります。
高血圧、高脂血症、喫煙、運動不足が加わるとますます進行していきます。
食前高血糖が続くと、神経障害や細小血管症(網膜症・賢症)が起こります。
高血糖⇒蛋白質の糖化など⇒血管は砂糖漬け(高血糖の影響はしばらく続きます)となり、アルコール、高血圧、高蛋白・高脂肪食で更に悪化します。
進行すると、足のしびれやインポテンツ、失明、尿毒症などになります。
糖尿病域にならないためには、食事・運動・ストレス自己管理し、良好な血糖を保つ。
適正体重を維持する。積極的に運動する。
油・塩分を控える。アルコールを減らす。食物繊維を増やす。
肥満となくし、膵臓に余分な負担をかけないようにする。
甘いもを控え、食後に運動をする。
血圧や高脂血症を上手に管理し、禁煙する。
定期的に検査し、病状にあった薬を組み合わせて血糖を良好に維持する。
ブドウ糖毒性を解除するために強化インスリン療法などで早目にすい臓を休ませる。
適切な量:理想的な体重に近づくように腹8分目にしましょう。
バランスよく:主食+主菜+副菜に果物と牛乳を添える。脂肪は控えめにしましょう。
規則正しく:薄味で合併症予防。よく味わって豊かな食事に。食物繊維は多く取りましょう。
一般名 | 主な栄養素 | 表分類(代表食品) | 1日の配分 |
---|---|---|---|
主食 | 炭水化物(即効性エネルギー) | 表1(イモ) | ごはん両手軽く3杯 |
果物 | 炭水化物、ビタミン、食物繊維など | 表2(フルーツー) | 中1個、小分け |
主菜 | 蛋白質、脂肪(血や肉を作る) | 表3(魚・豆腐) | 両手にのる程 |
牛乳 | 蛋白質、脂肪(血や肉を作る)、炭水化物、カルシウム | 表4(ヨーグルト) | 1本、間食などに |
油脂 | 脂質(貯蓄エネルギー) | 表5(ごま油) | 大さじ一杯 |
副菜 | ビタミン、ミネラル、食物繊維 | 表6(緑黄色野菜) | 両手3杯、300g |
調味料 | 塩分、砂糖 | 調味料 | 普通の1/2に |
運動不足があると心臓や肺の機能が弱まり、体力が低下します。
筋肉が衰えて肩こりや腰痛などの症状がでることもあります。
骨は運動の衝撃がないとだんだんもろくなっていきます。
余分なエネルギーは脂肪として弱く身体にたまり、肥満を招きます。
3日間運動しないと脂肪筋になり、インスリンの作用が低下します。
ブドウ糖の利用が促進され、血糖値が下がります。
インスリンの鍵穴(受容体)が増え、インスリンが効きやすくなります。
足腰が筋肉質になり、基礎代謝が増え、肥満解消に役立ちます。
加齢や運動不足による筋萎縮を防ぎ、骨も丈夫になります。
血のめぐりが良くなり、血圧が下がり、すみずみまで酸素が行き渡りエネルギーに満ち溢れてきます。
中性脂肪が改善し、善玉(HDL)コレステロールが上昇します。
心も元気になり、ストレス解消に役立ちます。脳も元気で記憶力も上がります。
癌をやっつける細胞が増え、大腸癌などが減ります。死亡率も減ります。
心血管系や整形外科的メディカルチェックを受けましょう。
合併症がある方は、状態が落ち着くまで積極的な運動は控え、まず血圧や脂質を管理します。
心拍数を活用し、自分のペースを守り、無理や競争はしないようにしましょう。
調子の悪いや環境が悪い時は無理せず運動はお休みしましょう。
薬やインスリンを用いている人は、低血糖対策をします。
(食後の運動、ブドウ糖の持参、血糖測定、補食、インスリンの調節など)
足に合った靴を選びましょう。膝周囲の筋力アップは膝痛に有効です。
天候に合わせて帽子と水、運動しやすい服装とタオルを準備しましょう。
運動の前後には軽いストレッチなどで準備体操・整理体操を行いましょう。
糖尿病診療ガイド(日本糖尿病学会)
糖尿病診療の手引き(日本糖尿病学会)
糖尿病食事療法のための食品交換表活用編(日本糖尿病学会)
糖尿病情報誌「さかえ」(日本糖尿病協会):患者さん向け
糖尿病療養指導のためのDMEnsemble(日本糖尿病協会):CDE(糖尿病療養指導士)向け
糖尿病療養指導ガイドブック(日本糖尿病療養指導士認定機構):CDE受験用
日本糖尿病協会 http://www.nittokyo.or.jp/
日本糖尿病学会 http://www.jds.or.jp/
日本糖尿病療養指導士認定機構 http://www.cdej.gr.jp/